古典を読んで考えるブログ

東洋古典を中心に読んでいって、日常起こる出来事とつなぎ合わせて考えるブログです。

色難し ~父と娘の最適な距離とは

梅雨入り。今年は比較的しっかり雨が降っているように思います。お百姓さんも一安心というところでしょうか。

さて、本日も引き続き弟子からの孝道に関する質問です。

 

子夏、孝を問う。

子曰く、色難カタし。事あれば弟子テイシ其の労に服し、酒食シュシあれば先生に饌センす。曾スナワち之を以て孝と為さんや。

論語-為政二-8)

 

【解釈】

今度は弟子の子夏が孝道について孔子に聞きます。

孔子は子夏には以下のように答えます。「両親に対する振る舞い方、顔色、表情などが大切で、しかも難しいものだね。何か仕事があって弟子が代わりに行うとか、食べ物があれば先に先輩に差し上げるとか、そういったことは師弟関係や先輩後輩関係でもある話であって、それをしているからといって孝行者ということにはならないのだよ。子夏は、しゃちほこばらずに、もっと朗らかに両親と接しなさい。」

 

論語の面白いところは、同じ質問でも相手によって孔子の答え方が変わるところです。昨日の子游に対しては、敬意がなければ犬猫を養うのと変わらない、といったと思うと、子夏には「形式的によく仕えているだけではダメ、親子はやはり情でつながっている関係であるから、もっとにこやかに、朗らかにお仕えしなさい」というわけです。

たしかに、孝道に限りませんが、「言い方」や「態度」というのはあるものです。

同じことを言っていても、言い方ひとつ、態度ひとつで伝わり方が全く違いますし、受け取られ方も変わります。これは親子のお互いについて言えることです。

また、ある程度社会的な関係である師弟・先輩後輩などであれば、形式的な礼儀を押さえればなんとかなるかもしれませんし、失礼には当たらないかもしれませんが、家族となると、そこにうまく「情」を含める必要があります。

親子というものはとにかく距離感が難しいもので、近づきすぎてムッとなったり、遠ざかり過ぎてムッとなったり、親しき中にも礼儀あり、でもあまり他人行儀もよくないね、といった具合です。

 

色難し、まさに一言で表現していますが、絶妙です。